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ケーススタディ: デラウェア州 Winterthur 美術館の所蔵品に対するラマン分析

写真提供: Winterthur 美術館

2022 年 1 月 1 日

Winterthur 美術館の Department of Conservation に所属する Associate Scientist 兼 Lab Manager の Rosie A. Grayburn 博士は、次のような言葉で、ラマン技術が文化遺産の分析に理想的であると説明しています。「inViaTM コンフォーカルラマンマイクロスコープの広々とした内部空間を活かして物体を in-situ 測定できるため、非破壊的に研究課題に取り組むことができました。一点物である文化遺産を調査するに当たっては、本当に重要なことです」

Winterthur の科学研究および分析実験所では、重要な歴史的発見など、対象物の分析に inVia を使用しています。

デニグの聖書

このドイツ語聖書が制作されたのは 1784 年頃で、ペンシルベニア出身の Ludwig Denig によって筆記および描画されたユニークな作品です。Winterthur 美術館は、ラマン分析により、目視だけでは識別が困難だった紺青とインディゴというふたつの異なる青色色素を識別できました。さらには、一部の緑色色素から紺青が検出されたことも明らかとなりました。これは、紺青が、青色と当時まだ知られていなかった有機黄色顔料の混合によって実現されたことを示唆しています。

ニュースリリース:  ニュースリリース:  ニュースリリース: ニュースリリース: Winterthur 美術館 レニショー inVia 塗装された織物

染色された織物

インディゴ浸染は、何世紀もの歴史を持つ技法です。レジストを使って織物に模様を作り、還元バットで染色します。その後、バットから取り出して空気にさらすと、酸化によって染料が織地に定着します。非常に稀ではありますが、専門知識が求められるため、インディゴを織物に手で直接塗ることもあります。この染色技法の最古の記録がどれかということについては、世界中の出版物や学芸員の間で見解が相違していますが、ヒ素をインディゴ還元剤として用いて 1738 年にイングランドで初めて行われたとする説が一般的です。しかし、Winterthur 美術館の織物コレクションや、世界各地にある他の数々の織物コレクションの中には、12 世紀に印刷および塗装されたインド織物があります。学芸員や管理員によると、その青色は、バットで染めらたのではなく、刷毛を使って塗られたようです。Alka Raman 特別研究員は、ラマン技術を用いてこれらの青色染色を調べました。

そのためにはまず、インドのコレクションに含まれていた布に塗装された青色がインディゴであることを立証することが重要でした。塗装された 4 枚のインド織物が、レニショーの inVia ラマン分光装置を使って 785nm ダイオードレーザーによる in-situ ラマン測定を受ける初回検査の対象として特定されました。1577cm-1 の非常に強いピークが織物の青色領域から測定されたことから、調査したすべての織物サンプルにタイワンコマツナギが存在することがわかりました。タイワンコマツナギは、天然インディゴの抽出元として、20 世紀以前に使用されていた主な植物種のひとつです。この大発見により、塗装されていると学芸員が考えていた領域にインディゴが存在することが確認されました。その結果、インディゴの再酸化を遅らせるために用いられた還元方法と化学物質についてさらに研究することができ、織物に手作業で塗装できるようになりました。

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Winterthur 美術館の詳細

アメリカ合衆国デラウェア州にある Winterthur 美術館は、米国文化の中で何世紀にもわたって人気を博した装飾美術品を展示しており、1640 年以降に北米で制作または使用された 90,000 点近い無二のコレクションを所蔵しています。所蔵品は、175 室を有する大邸宅に展示されており、牧草地、森林、池、水路を有する 1,000 エーカーの保護地内に佇むこの邸宅は、Henry Francis du Pont 家が居住していた当時の様子がほぼそのままの状態で保たれています。du Pont が設計した 60 エーカーの庭園は、米国でも指折りの美しい庭園です。同美術館の大学院課程と幅広い分野を網羅する研究図書館により、Winterthur は今や、米国の芸術と文化の重要な研究拠点となっています。

Winterthur 美術館の詳細については、www.winterthur.org を参照してください。