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難しい局面に:三次元測定機用スタイラスのガイド

最適なスタイラスの選定に際し、考慮すべき重要な要素が複数あります。

スタイラス選定時の留意事項

三次元測定機の測定で求める精度を検討する際、最低でも 1 対 5 の三次元測定機の不確かさの形状公差に対する比率を用いるのが一般的です(1 対 10 が理想的ですが、多くの場合費用面で折り合いがつきません)。この比率では、想定される測定物のばらつき範囲と比較して測定結果に含まれる不確かさが比較的小さくなる安全マージンが得られます。最も厳しい公差でこの 1 対 5 という比率を維持できていれば、精度に関しては問題ありません。

ただし残念ながら、プローブに装着しているスタイラスの交換と同じくらい当たり前のことが、達成できる実精度に非常に大きな影響を与え、測定結果に大きなばらつきを生みます。精度を確認するために三次元測定機を年に 1 度校正するだけでは、校正試験に使用しているスタイラス(非常に短いものを使用することが一般的)での測定結果しか保証されないため、不十分です。また、この試験時の精度は高い可能性で、最高の状態での精度です。より多くの測定結果での精度をより正確に把握するには、スタイラスによる測定の不確かさへの影響度を理解する必要があります。

本ページでは、三次元測定機全体の精度に影響する、スタイラス選定時に考慮すべき主要な 4 点について解説します。

1.スタイラス球の真球度(真円度)

2.スタイラスのたわみ

3.熱安定性

4.スタイラス球の材質の選定(スキャニング時)

スタイラス球の真球度(真円度)

測定に使用するスタイラスの先端は、多くの場合球形で、材質は人造ルビーであることが一般的です。この先端の真球度(真円度)に偏差があると、三次元測定機の測定の不確かさの要因なり、三次元測定機の精度が簡単に 10% 低下します。

ルビー球は、真球からの球の最大偏差に関連する「グレード」で定義された精度レベルに合わせて製造されています。一般的に用いられる球の仕様としてはグレード 5 とグレード 10 があります(グレードの数値が小さくなると精度が上がります)。グレード 5 からグレード 10 にダウングレードすると、スタイラス単体としてのコストは多少抑えられますが、1 対 5 の比率にはリスクとなります。

球のグレードは見た目で判断することはできず、また測定結果にも明確には現れません。そのため、球のグレードが重要なのか判定することも困難です。グレード 5 の球を標準で使用することも解決策のひとつですが、コストが若干上がります。ただし、ここで上がるコストは、良品をスクラップにするコストや、より悪い可能性として非適合品を通過させることで発生するコストに比べると、深刻ではありません。また、三次元測定機の精度向上に応じて、球のグレードの変化による影響も大きくなります。最高仕様の三次元測定機では、これらにより 10% 近く精度が低下します。

下記に例を記載します。

ISO 10360-2 (MPEP) に準拠した典型的なプローブ計測誤差(グレード 5 の球を装着したスタイラスを使用して算出)

  • MPEP = 1.70µm

25 個の離れた半径としてそれぞれ評価された 25 個の離散点を測定することで算出した値です。半径のばらつきの範囲が MPEP の値です。スタイラス球の真円度がこの値に直接的に関わります。そのため、グレード 5 の球からグレード 10 の球に替えるとこの値が 0.12µm 増加し、この例ではプローブ計測誤差が 7% 大きくなります。

  • MPEP = 1.82µm

なお、スタイラス球の真円度は MPETHP にも影響します。MPETHP では、球に 4 本のスキャニングパスを用いてスキャニングプローブの性能を評価します。

注:

  • グレード 5 の球の真球度 = 0.13µm
  • グレード 10 の球の真球度 = 0.25µm

極めて厳しい要件用に、当社では真球度 0.08µm のグレード 3 の球を各種用意しています。

スタイラスのたわみ

業界標準の TP20 のようなタッチトリガープローブを使用する場合、通常はスタイラスモジュールを交換して各測定タスクに最適なスタイラスをそれぞれ適用します。スタイラスが長くなるほど精度が低下するため、1 本の長いスタイラスをすべての形状に使用するということはしません。スタイラスはできるだけ短くかつ硬くしておくことが求められます。それはなぜでしょうか。

この精度低下は、スタイラスが直接の原因ではないものの、スタイラスの長さにより拡大します。この誤差は、方向ごとにプローブをトリガーさせる力が異なることが原因で発生します。プローブは通常、スタイラスと測定物が接触したその瞬間にはトリガーしません。センサー機構内のバネ荷重を上回る力がかかる必要があります。スタイラスはこの力によって弾性変形を起こします。この変形によって、物理的に接触してからトリガーを出力するまでの間に、プローブは測定物に対してわずかに移動することになります。このわずかの移動がプリトラベルとして知られています。

プローブの多くで採用されている三角の三点支持式配置では、トリガーするために必要な力が一定ではありません。硬い方向では、スタイラスがより大きくたわむまでプローブはトリガーしません。また、三次元測定機がより大きく移動するということでもあり、そのため、プリトラベル量もアプローチ角度によって変化します(右図参照)。プリトラベルのばらつきは、複合的なアプローチ角度(X、Y および Z 軸)になるとさらに複雑になります。

この影響を極力抑えるために、すべてのスタイラスを使用前に寸法が明確な基準球上でキャリブレーションします。このキャリブレーションで、スタイラスとアプローチ角度のすべての組合せにおける誤差をマッピングするのが理想です。しかし実際には、時間短縮のために代表的な角度を選び、平均化することが多いため、わずかな誤差が残ります。

この残った誤差が測定の不確かさにどの程度影響するかは、実証的なテストを実施しない限り特定は困難です。残ったプリトラベルのばらつきによる誤差が、選定したスタイラスの剛性によって大きくなることに注意する必要があります。まり、スタイラス設計時の材質選定の重要性が大きく、軸の曲げ剛性と重量やコストなど他の特性とを比較検討する必要があります。ヤング率 E = 210kN/mm2 であるスチールは多くの短めのスタイラスに適している一方で、最も広く使用されている高剛性の材質は超硬 (E = 620kN/mm2) です。ただし、超硬も高密度であるため、長いスタイラスではめったに使用されません。長いスタイラスとした場合は、カーボンファイバが剛性 (E ≥ 450kN/mm2) と軽量の両方で優れています。一方、軽量さと熱に対しての安定性が求められる工作機械でのアプリケーションでは、セラミック(E = 300~400kN/mm2)もよく使用されます。

また、スタイラスの剛性にはスタイラスアセンブリの結合部も影響を与えます。ヒステリシスが発生するため結合部を設けないのが原則ですが、複雑なパーツを固定したセンサーで測定する際にはこの原則を守れない場合もあります。そのような場合には、各種スタイラス、エクステンション、コネクタ、ナックルから成る構成が必要です。なお、ここでも、剛性や重量、堅牢性に影響があるため、各構成要素を選定する際にはそれぞれの材質について考慮することが重要です。

熱安定性

温度の変動によって深刻な測定誤差が発生することがあります。スタイラスに適切な材質のエクステンションを選定することで、環境が変化する中でも優れた安定性を得ることができ、より一貫した測定結果につながります。熱膨張は長さに依存するため、長いスタイラスを使用している場合には特に、熱膨張率の低い材質が求められます。

上記ですでに記載されているように、カーボンファイバが、剛性、軽量さ、そして温度が変化しても長さが変化しないことから、長いスタイラスやエクステンションに最も広く採用されています。結合部やナックルなどに金属が求められる場合には、強度、安定性そして密度の点でチタンが最適です。レニショーでは、プローブとスタイラスのどちらのエクステンションもこれらの材質でラインナップしています。

スタイラス球の材質の選定

多くの場合、ルビー球をスタイラスの先端として選択します。しかし、他の材質のほうが適している場合もあります。

タッチ測定では、スタイラス先端は表面とわずかな時間しか接触しないため相対運動がありません。スキャニング測定では、球が測定物の表面を滑り、その結果摩擦摩耗が生じるため、異なります。極端な場合、接触時間がこのように延びたことによってスタイラス球の材質が除去されたり他の材質が球に沈着したりして真球度に影響が出ます。球の特定箇所が測定物に常に接触するような場合にはこの影響が顕著です。当社はこの影響について広範な調査を行い、2 種類の摩耗メカニズムに注目しています。

摩損

Abrasive wear摩損は、鋳鉄などの面のスキャニング時に発生します。残留した微粒子がスタイラスとワークに細かな傷を生じさせ、スタイラス先端に小さな平坦面ができます。このような場合には、頑丈なジルコニア球が最適です。

凝着摩耗

Adhesive wear test 2凝着摩耗は、スタイラス球と測定物の材料がお互いに化学親和力を有する場合に生じます。アルミの測定物をルビー(酸化アルミ)球でスキャニングする際に見られることがあります。比較的やわらかい測定物からスタイラス球に材料が移り、球にアルミの膜が生じます。これによっても真円度に影響がでます。このような場合は、窒化珪素が最適です。窒化珪素は摩耗耐性が高く、アルミを引き付けません。

その他の要素

スタイラス選定時のその他の検討事項には下記があります。

  • 使用するセンサーに合わせたスタイラスのねじ径
  • ストレート、スター、スイベル、カスタムなどのスタイラスタイプ
  • 球、シリンダー、ディスク、半球などのスタイラス先端のタイプ。
  • スタイラス先端のサイズ。測定精度への表面粗さの影響を最小限に抑えるため。

本ページに記載の内容の詳細については、パンフレット:高精度スタイラスをご覧ください。

最後に

スタイラスはどんな測定でも必要不可欠な要素であり、センサーと測定物間で極めて重要な役割を果たします。例えば、パーツ周りの形状にアクセスできるようになります。またスタイラスは、表面の位置をプローブに正確に伝達するものでなければなりません。高精度な測定を円滑に行うために、測定要件に合った材質で製作された精密部品からスタイラスを構築する必要があります。慎重に選定した適切なスタイラスであれば不確かさが著しく大きくなることはなく、一貫した信頼性の高い結果を得られます。パーツの公差が厳しい場合や長いスタイラスが必要な場合、これらの選択による精度への影響度を慎重に検討する必要があります。

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