ナビゲーションのスキップ

ラマン分光のメリット

ラマン分光のメリットや、ラマン分光が複合システムや相関顕微鏡にとってなぜ理想的なのかを紹介します。FTIR や XRD といった構造解析手法を補完するのがラマン分光です。

ラマン分光は、たいていはサンプルの前処理が不要な、汎用性の高い非破壊の化学分析手法です。ラマン分光に他のイメージング技術や分析技術を組み合わせることで、多様な情報を入手することができます。ラマン分光はフーリエ変換赤外分光 (FTIR) および X 線回折 (XRD) を補完する技術です。これらの解析手法について比較します。

ラマン分光の利点

通常は、サンプル前処理の工程を省略し、すぐにラマン解析にとりかかることができます。主なメリットについて紹介します。

材料の化学成分と構造を分析

ラマン分光では、さまざまな化学物質や構造を検出することができます。例えば、同じ原子を含んでいても結晶形が異なる多形体です。加えて混合物の解析もでき、混合物に含まれる化学成分を定量化することもできます。


高い汎用性

金属以外のあらゆる物質が有効なラマンスペクトルを有しているため、ラマン分光は不明サンプルの分析に理想的です。また、金属化合物もラマンスペクトルを有しているため、ラマン解析を通じて金属酸化物を特定、腐食を把握する、ということができます。


サンプルの前処理がほぼ不要

物理レンズでサンプルに光を当てるだけで、ラマンスペクトルを収集できます。それ以上のサンプルの前処理は必要ありません。


ラベルフリーの生化学検出

染料を使用して生物組織や細胞を区別しておく必要がありません。

非接触、非破壊

同じ状態のサンプルを何度でも解析できます。


微量でも解析可能

高性能なラマンマイクロスコープなら、異物やナノダイヤモンド、単層グラファイトといった 1µm 以下の大きさの物質でも測定が可能です。高性能なラマンマイクロスコープは開口数の大きいレンズを使って効率的に光を照射し、サンプルの微小領域からのラマン散乱光を収集します。


大型サンプルやバルクサンプルの解析が可能

移動できないサンプルの分析には、光ファイバプローブを使用します。時には、リモートで in-situ ラマン分析をする必要があります (シンクロトンのビームライン上やケミカルリアクタ内など)。


ウェハ内サンプルに最適

コロイド懸濁液や生体細胞、生化学混合物など、水溶液内のサンプルも解析可能です。ぬれたサンプルを抽出したり、乾かしたりすると、時間がかかりますし、サンプルが変性してしまうおそれがありますが、そのような処理が必要ありません。

Virsa グラフェン ガラスバイアルの内側にあるグラフェン粉末のラマン解析が可能です。

相関ラマン分光

ラマンイメージを、他の分光技術で取得したイメージとひも付けることができます。ラマン分光はサンプルの前処理がほぼ不要、非破壊式であるため、この作業が簡単です。レニショーのラマンシステムは、他の共局在測定技術に簡単に組み込むことができます。例えば:

  • スキャニングプローブ顕微鏡 (SPM)/原子間力顕微鏡 (AFM)
  • レニショー inLux SEM ラマンインターフェースを使った走査型電子顕微鏡 (SEM)
  • 光電流イメージング
  • フォトルミネセンス (PL)
  • 中赤外線サーモグラフィ (MWIR)
  • ナノインデンテーション
  • 蛍光寿命イメージング (FLIM)

これらの組み合わせることで、サンプルを詳細に解析することができます。

複合ラマンシステムの詳細

ID カード (A) 光学イメージ、(B) SEM イメージ、(C) ラマンイメージの相関関係を示すオーバーレイイメージ。ラマンイメージには、ポリカーボネート (赤)、ルチル TiO2 (青)、ポリ[4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ポリ (アジピン酸ブチレン) (緑)、銅フタロシアニン (シアン) およびポリエチレンテレフタレート (黄) からなるポリマラミネートが確認できます。シアンの層はラマンイメージにのみあり、光学イメージと SEM イメージには写っていません。

ラマン分光の概要

ラマン分光が初めての方は、ラマン分析の基礎からご覧ください。

eBook のダウンロード

ラマン分光とフーリエ変換赤外分光 (FTIR) の比較

フーリエ変換赤外分光 (FTIR) は広く活用されており、ラマン分光とよく比較されます。どちらも振動分光法であり、物理的な機構が異なるため、お互いに補完し合う関係にあります。

FTIR では、分子結合の振動周波数に対応する各周波数の光を、サンプルがどのように吸収するのかを測定します。赤外線は、結合が双極子モーメントの変化を伴う場合にしか吸収されません。そのため FTIR は、水中での O-H 伸縮など、極性結合を持つ異核官能基の振動の影響を受けやすいのが特徴です。

対照的にラマン分光では、光の非弾性の散乱を測定し、分子の振動を検出します。ラマン散乱が起きるには、入射光子によって、結合の分極率が変化しなければなりません。ラマン分光のほうが等核分子結合の振動の影響を受けやすく、C-C、C=C、C≡C を区別することができます。

ラマン分光も FTIR も、どちらもマイクロスコープベースです。ラマン分光は FTIR よりも以下の点で優れています:

• 赤外線に反応しない振動モードを検出できます。

• 短い波長の光を使うことが多いため、マイクロスコープベースの FTIR (顕微 FTIR) よりも小さい粒子を検知できます。

• ラマンバンドが狭いため、化学特異性が高い物質を区別できます。

• FTIR では、サンプルを減衰全反射 (ATR) の先端と接触させなければならない場合もあります。固体サンプルをヌジョール法または溶剤ですりつぶして前処理しなければならないことも少なくありません。そして次の処理として、サンプルの混合物を KBr ディスク間で圧迫します。液体のサンプルの場合は NaCl プレートが必要な場合もあります。

• 定量的なラマン分析を行うにはリファレンスとなる物質が必要な場合があるものの、固定光路長でサンプルを前処理する必要はありません。FTIR による定量分析は吸収法です。そのため、サンプル内の光路長が一定である必要があります。

• キラル分子の脱分極の考察に適します。


ラマン分光と XRD の比較

X 線回折 (XRD) は非破壊の分析手法のひとつです。位相成分、結晶構造、固体/液体サンプルの配向といった物理特性の調査に用いることができます。X 線の波長は結晶格子内の原子間の距離に相当するため、入射 X 線と結晶サンプル間で干渉が強まり合います。生じた XRD パターンを分析することで、結晶構造内の長距離秩序を把握することができます。

物質の結晶構造を理解するうえで、ラマン分光は XRD を補完する役割を担います。一方で、ラマン分光には XRD を比べて以下のようなメリットがあります。

• 結晶構造の物質と非結晶室の物質、両方の測定が可能です。

• 単結晶や単粒子サイズのサンプルを少量でも測定が可能です。

• 真空室や、湿度および温度の管理が不要です。

ラマンシステムを最大限に活用するために

ラマン分光には多くの利点がありますが、同時に課題もあります。使用中に直面する問題への対処方法についてはこちらをご覧ください

ラマン分光とは

ラマン分析、フォトルミネッセンス (PL) についてご興味をお持ちでしたら、当社までお問い合わせください。高速ラマンイメージング、データ解析などについてお答えいたします。

ラマン分光の概要