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レニショーの光学式エンコーダ、「ユニーク」なリニアモータに採用

高度な産業プロセスは等速制御がないと成り立たない。だが、従来のようなモータ設計だとコギング力が発生し、このコギング力によってモータ速度にリップルが生じる。KOVERY 社は先進的なリニアモータを設計しているが、この問題を解決するためにレニショー製エンコーダを採用している。

背景

リニアモータは、フラットパネルディスプレイ (FPD)、半導体、オートメーション、医療診断、3D プリント、工作機械など、メジャーな産業分野で広く使用されている。ステータとロータが「展開された」回転同期モータに相当し、回転トルクではなく、長手方向に推進力を生み出す。

KOVERY 社は、韓国の京畿道を拠点とする超精密モータメーカーで、たゆまぬ研究開発の結果、今では高度な高精度モータシステムの大手サプライヤに数えられている。KOVERY 社の精密モータは、速度リップルをもたらすコギング力、およびリニアモータのステータと可動パーツ間の吸引によるベアリングの摩耗増を、特許技術を用いて抑制または最小化している。

KOVERY 社のリニアモータには、整流と位置決め制御のために、レニショーの QUANTiC™ インクリメンタルエンコーダが使用されている。また QUANTiC だけでなく、EVOLUTE™ アブソリュートエンコーダや、機械キャリブレーション用の XL-80 レーザーシステムなど、他のレニショー機器も KOVERY 社では導入されている。これらのエンコーダは、厳しい環境でも高精度な位置情報を出力するという、極めて重要な役割を担っている。

課題

リニアモータは、一連の電磁コイル (フォーサ) の下に永久磁石トラックを有する「平面状リニアモータ」が一般的である。

半導体や FPD 製造などの分野における厳しいモーションコントロールを実現するには、このフォーサを精密に制御する必要がある。

高度な産業プロセスは等速制御がないと成り立たない。だが、従来のようなモータ設計だとコギング力が発生し、このコギング力によってモータ速度にリップルが生じる。

それに対する選択肢のひとつが、推進力の高さを犠牲にして制御性を高めたスロットレス (コアレス) 扁平モータを採用することだが、KOVERY 社は、推進力を犠牲にすることなくコギング力を最小限に抑える独自のモータを開発した。

2 本の永久磁石トラックを備えた KOVERY 社のリニアモータ

2 本の永久磁石トラックを備えた KOVERY 社のリニアモータ

同社の President である Kim Houng-joong 氏が、自社の特許技術を次のように紹介している。

「市場に出回っているリニアモータには、いろんな形態のものがあります。どのデザインにもメリットとデメリットがあります。当社が独自開発したリニアモータは、永久磁石を垂直面に配置して、フォーサコイルのポールピース間を通過するようにした初のモータです。これにより、磁束が均一になり、磁石トラックごとに磁気回路を独立させることができます。当社のデザインだと、トラックの数を増やすだけでモータの強度を高めることができます。そのため、スロット付き鉄心と磁石トラックの間で生じる通常の吸引力が、推進力を犠牲にすることなく効果的に減少します。つまり、モータの全体的な推進力が強まり、従来のリニアモータと比べて最大で 2 倍以上になります。それ以外に、軽量化、設計の自由度向上、組み立てやすさ、所有コストの安さといった利点もあります」

位置決めエンコーダによってリニアモータの整流が可能となり、スムーズな動きと位置決め制御ができるようになる。ジッタと内挿分割誤差の少ないエンコーダが好まれるのは、位置決め制御の精度が高く、速度リップルが低いからである。

リニアモータ用のエンコーダが良好に機能するためにどうしても必要な設計上の特徴が 2 点ある。最小曲げ半径が小さく、ケーブル寿命が長いリードヘッド (センサー) ケーブルを使用して、機械のケーブルトラックにおける圧着やねじれ、曲げを許容することと、最大動作温度が高く、電源投入時にモータコイルからの予想熱出力に耐えられることである。

リードヘッドを磁気コイルの近くに設置する場合は、エンコーダも強い磁界に耐えられる必要がある。

解決策

KOVERY 社では、QUANTiC などレニショーのさまざまな光学式エンコーダを使用している。

半導体製造装置や FPD 製造機器に使用されている KOVERY 社のリニアモータには、QUANTiC エンコーダと RTLC40 スケールが採用されている。他の用途に向けたモータでも、レニショーの EVOLUTE アブソリュートエンコーダRTLA50-S リニアスケールが使用されている。

Kim Houng-joong 氏は続ける。「当社のリニアモータにはさまざまな仕様があり、ストロークの長さだけでも 12 種類を超えます。時には、ストロークが最大で数メートルにも及ぶカスタマイズ製品を提供することも必要です。ストロークの長いリニアモータに対するマーケット需要は伸びていくと私たちも予想しています。QUANTiC エンコーダに使用する RTLC40 スチールテープスケールはリール巻きで納入されるため、モータごとにちょうど必要な長さで切断することができ、作業効率が向上しています。加えて、納品までのリードタイムが短く、コストパフォーマンスも抜群です。レニショーのエンコーダのおかげで、当社は製品の競争力を高めることができました」

QUANTiC エンコーダの利点は、業界標準のデジタル出力またはアナログ出力への対応、±0.3mm (取付け高さ) および±0.9° (ヨー) の広い取付けおよび動作時公差、最大 24m/s の高速動作、±80nm という低周期誤差、しなやかな EMI 保護用シングルシールドケーブル、取付け時に便利な内蔵セットアップ LED などである。

オプションの高度診断ツール ADTi‑100 と ADT View ソフトウェアを使えば、詳細データを取得して、診断に活用することもできる。ADTi‑100 は、リードヘッドを取り付けにくい場合や、現場での診断およびトラブルシューティングに最適である。

加えて QUANTiC なら、セットアップ LED と広い取付け公差のおかげで、迅速かつ直感的に取り付けることができるため、装置の製造コストを削減し、保守時の機械停止時間を短縮することができる。また、低周期誤差と高分解能によってリニアモータの精度が上がり、速度リップルの減少により、円滑なモーションコントロールが可能となる。

Kim Houng-joong 氏は次のように説明する。「エンコーダシステムを選ぶにあたっては、当社のお客様の用途に求められるエンコーダ仕様に加え、当社の生産環境における取付け難易度と信頼性も考慮します。装置メーカーからは短納期での対応を要求されます。受注から設計、製造、試験、納品まで 3~6 か月ということも少なくありません。

パーツを迅速かつ簡単に取り付けられることが、納期を守るための大事な条件のひとつであることは間違いありません。QUANTIC エンコーダは取付け公差が広いため、速やかに取り付けることができます。また、リードヘッドのセットアップ LED の色から、信号強度が十分か、取付けに問題がないかを速やかに判断できます。時間もコストも節約できますし、自信を持って作業を進められます」

レニショーの EVOLUTE アブソリュートエンコーダは、広い取付け公差や汚れに対する耐性など、QUANTiC シリーズと同じ強みを数多く有している。高度診断ツール ADTa-100 と ADT View ソフトウェアを使って、詳細データを取得できる点も同様である。

KOVERY 社では、レニショーの XL-80 を使用して、出荷前にモータのキャリブレーションを実施している。XL-80 は、機械のキャリブレーションと品質管理を目的としたレーザーシステムで、セットアップが容易なこと、位置決め測定精度が 0.5ppm と非常に高いこと、軽量で持運び可能なことが特徴のシステムである。

「当社のお客様の大半は、品質要求の厳しい精密機器メーカーなので、モータを出荷する前に、厳しく検査する必要があります。リニアモータのリニアリティ、真直度、そして直角度を、レニショーの XL-80 レーザーシステムを使用して 1 台ずつ計測します。速度リップルの分析など、動的計測も行います。製品試験に関して言えば、XL-80 システムは簡単にセットアップできて使いやすいため、すばらしい選択であることに疑いの余地はありません」と Kim Houng-joong 氏は言う。

QUANTiC エンコーダに使用する RTLC40 スチールテープスケールはリール巻きで納入されるため、モータごとにちょうど必要な長さで切断することができ、作業効率が向上しています。加えて、納品までのリードタイムが短く、コストパフォーマンスも抜群です。レニショーのエンコーダのおかげで、当社は製品の競争力を高めることができました」

KOVERY 社 (韓国)

KOVERY 社 President の Kim Houng-joong 氏

KOVERY 社 President の Kim Houng-joong 氏

結果

レニショーのエンコーダとレーザーキャリブレーションシステムを採用したことで、KOVERY 社は、半導体製造装置をはじめとする高度な加工機向けの最先端リニアモータを製造できるようになった。レニショーと KOVERY 社のパートナーシップは現在も続いており、最新型リニアモータの開発を支えている。

Kim Houng-joong 氏は、最後に次のように述べた。「当社は超高精度の高速リニアモータの開発に注力しており、すべてのコンポーネントについて完全に理解することはできません。その点で、レニショーのアフターセールスサポートが非常に役立っています。当社の開発チームと度々緊密に話し合い、必要に応じて研修を実施して、当社の問題をいくつも解決してくれました」

KOVERY 社について

KOVERY 社は、たゆまぬ研究開発と独自技術の開発に余念がない超高精度モータメーカーで、国内産業の成長と繁栄に貢献すること、そして超高精度モータシステムの商品化と量産を通じてグローバル市場に参入することを、戦略的目標として掲げている。同社がこれまでに出願したモータ関連特許は 200 件を超えている。

KOVERY 社の詳細については、www.kovery.com を参照のこと。

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