ナビゲーションのスキップ

農業用多層フィルムが河川のマイクロプラスチック汚染源であることを示したラマン分光

2022 年 5 月 1 日

作物生産者は、雑草を抑制し、水を保存し、大気物質による汚染を防ぐために、プラスチック製の多層フィルムを使用するのが一般的です。しかし、このフィルムはリサイクルしにくく、多層フィルム (MMF) 由来のマイクロプラスチックが広範囲の環境汚染をもたらす危険性があり、農地土壌が多量のマイクロプラスチックを含んでしまっている可能性もあります。マイクロプラスチックは、水によって川に流され、川によって海へと運ばれます。マイクロプラスチックは、海洋生物を蝕むだけでなく、食物連鎖を通じて人体に入ってくる可能性もあります。

Guangxi University と Chinese Academy of Tropical Agricultural Sciences の研究者たちが、ラマン分光を用いて、農業用多層フィルムに由来するマイクロプラスチックの割合を測定しました。具体的には、レニショーの inVia コンフォーカルラマンマイクロスコープを使用して、海南省にある 4 本の主要河川 (南渡河、文瀾河、珠碧江、昌化江) 周辺の異なる地点から採取した底質と土壌を分析しました。

まず、試料を過酸化水素で濾過してマイクロプラスチックを抽出しました。次に、この溶液をギ酸カリウムで沈殿させ、得られた上清を濾過しました。最後に、残留物を実体顕微鏡で検査し、マイクロプラスチック片を同定して、透明の石英スライドガラスへと慎重に移しました。

中国で多層フィルムから取得したマイクロプラスチックのスペクトル図 1 | 典型的な疑わしい MMF 試料と標準的な多層フィルム試料、そしてポリエチレンから取得した UV-Vis ラマンスペクトル。

検出された多層フィルム由来のマイクロプラスチック

多層フィルムは、主成分であるポリエチレンマトリックスと添加剤から成るのが典型的です。研究者たちは、ポリエチレン試料、多層フィルム標準試料、そして疑わしい MMF 試料からラマンスペクトルを収集し、可視励起 (532nm) と UV 励起 (325nm) を併用して、直径 1µm から 5000µm のマイクロプラスチックを分析しました。3 種類すべての試料から得られたスペクトルは、1130cm-1、1440cm-1、1296cm-1、そして 2800cm-1 から 2900cm-1 にピークがありました。これにより、疑わしい MMF が多層フィルム由来であることが確認されました。

研究者たちは、MMF と多層フィルム試料の表面組成の類似性も調査し、UV-Vis ラマンスペクトルのピークから化学基を同定することができました。

表 1 は、4 本の河川の河口から採取した疑わしい MMF 試料と多層フィルム標準試料の表面組成を示しています。疑わしい MMF 試料はいずれも、多層フィルム標準試料に類似していました。

表 1 | 河口から採取した疑わしい MMF 試料と多層フィルム標準試料の表面組成データ。標準偏差は二重反復測定値から求めたものです。

inVia コンフォーカルラマンマイクロスコープを用いた中国の研究による多層試料データのグラフ

多量のマイクロプラスチック

研究者たちは、UV-Vis ラマン分光を用いて、農地と河口におけるマイクロプラスチック (MMF を含む) の量を評価しました。農地には、土壌 1kg 当たり 1240 点~2860 点の MMF が含まれており、マイクロプラスチック全体の約半分を占めていることがわかりました。河口では、堆積物 1kg 当たり 38 点~82 点の MMF が含まれており、マイクロプラスチックの全内容の約 10% を占めていまいた。

中国のさまざまな地域で採取した比較試料のグラフ


図 2 | 調査した 4 本の河川周辺の農地および河口におけるマイクロプラスチックの総量と MMF の量。

土壌および底質中のマイクロプラスチック

研究者たちはこの研究で、ラマン分光がマイクロプラスチック研究に役立つ技術であることを証明しました。この技術を用いて、農地土壌と河川底質の両方に含まれるマイクロプラスチックの中に MMF が大量に混じっていることを明らかにし、MMF が、マイクロプラスチック汚染の原因でありながら見過ごされていることを発見したのです。

本稿は、2021 年 10 月にリサーチスクウェアに公開された Meng Jiao、Beibei Liu、Lin Wu、Lu Ren、Luya Wang、Wending Ma、Ruilong Li 著「中国海南島の主要外部流域河川における多層フィルム由来のフルサイズマイクロプラスチックの発生と特徴」の要約であり、原著は https://www.researchsquare.com/article/rs-991254/v1 に掲載されています (英語版のみ)。

この記事で取り上げたトピックは、原著をレニショーの社員が解釈および要約したものです。いずれのトピックも単なる要約であり、著者の原著を忠実に表現したものと解釈すべきではありません。ライセンス許諾者は、いかなる形でも Renishaw plc を支持していません。

原著の著作権表示: copyright © 2021 Jiao, Liu, Wu, Ren, Wang, Ma and Li.これは、クリエイティブコモンズ表示ライセンス (CC BY) の条項に基づいて配布されているオープンアクセス記事です。原著者および著作権所有者のクレジットが明記され、このジャーナルに掲載された原文献が引用されることを条件に、学術慣行に従って他のフォーラムで使用、配布、または複製することが許可されています。これらの条項に準拠しない使用、配布、または複製は許可されていません。

特集記事:  特集記事:  特集記事: 特集記事: レニショーのラマン分光に関する記事と参考資料の画像

参考資料

ラマン分光に関するさまざまな記事、ケーススタディ、ニュースを用意しています。

記事を読む

inVia Inspect ラマンマイクロスコープ

inVia マイクロスコープについて

inVia コンフォーカルマイクロスコープの適性についての詳細情報

詳細について