ナビゲーションのスキップ

ラマンバンドとは

ラマンバンドが示すもの

同一の原子が規則的な配列で、すべてが同じ構造を持つ結晶 (ダイヤモンドの炭素原子など) のラマンスペクトルは、簡単に理解できます。これらの場合には、たいてい顕著なラマンバンドは 1 個のみです (結晶の分子環境が 1 個のみであるため)。

一方、ポリスチレンのラマンスペクトルは、分子がそれほど対照的でなく、炭素原子に加えて水素原子が含まれているため、より複雑です。さらに、原子をつなぐ結合のタイプもさまざまなものが存在します。

振動周波数

振動の周波数は、関係する原子の質量と、原子間の結合力に依存します。重い原子で結合力が弱い場合は、ラマンシフトが低くなります。軽い原子で結合力が強い場合は、ラマンシフトが高くなります。

ポリスチレンのラマンスペクトルでは、3000cm-1 付近で高周波数の炭素-水素 (C-H) の振動が見られます。一方、低周波の炭素-炭素 (C-C) 振動は、800cm-1 付近に見られます。C-H の振動が C-C の振動よりも周波数が高いのは、水素が炭素よりも軽いためです。

1600cm-1 付近には、強い二重結合 (C=C) により結びついた 2 個の炭素原子が確認できます。これは、弱い単結合 (C-C、800cm-1) により結びついた 2 個の炭素原子よりも周波数が高くなっています。

これらのシンプルなルールに従うと、ラマンスペクトルの多くの形状を説明できます。

振動の詳細

ラマンスペクトルを詳細に検討すると、より微小な効果を確認できます。結合力も振動速度に影響を及ぼします。例えば、ポリスチレンの C-H 振動は、2900cm-1 と 3050cm-1 付近の 2 個のバンドに表れています。前者の炭素は炭素鎖 (「脂肪族」) の一部で、後者の炭素は炭素環 (「芳香族」) の一部を構成しています。

複雑な分子の振動は、ある程度は多数の単純な二原子分子の振動で構成されるものと捉えることができます。しかし、ラマンスペクトルに含まれる豊富な情報は、より大きな原子グループの振動を考慮することによってのみ理解できます (ポリスチレンにおいて 1000cm-1 に現れる芳香族炭素環の拡大/収縮の「呼吸モード」など)。

低周波数振動

さらに、100cm-1 以下の低いラマンシフトを持つラマンバンドも研究できます。これらは、非常に重い原子か、結晶格子全体の振動など、非常に大規模の振動に由来するものです。レニショーのラマン分光装置を使用すると、これらのモードを調べて、豊富な種類の物質や結晶を検討し、種々の結晶形 (結晶多形) を判別できます。

まとめ

このように、ラマンスペクトルはさまざまな形状から構成され、それぞれが振動モードに関連しています。スペクトルは各物質に固有のものであるため、物質を同定できます。振動モードを完全に理解することは興味深いことですが、同定には参照データベースを使用できるため、そのような知識はほとんど必要ないことにもご留意ください。

パンフレット「ラマン分光とは」のダウンロード

  • カタログ:  ラマン分光とは カタログ: ラマン分光とは

    レニショーでは、1990 年代初頭からラマン分光測定システムを提供しています。弊社でよく尋ねられる質問の一つに、「ラマン分光とは何か」というものがあります。 このパンフレットでは、この質問に回答すると共に、「ラマンイメージはどのように作成されるのか」、「SERSとは何か」といった関連する質問への回答など、役立つ情報を提供します