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品質向上とコスト削減に全力投入

レニショープローブシステム導入でスクラップがゼロ、25 万ポンドのコスト削減に成功した日産

西欧の自動車産業はネガティブに言われることが多く、主要な自動車メーカーが欧州に量産工場を保有し、世界でも有数の生産高を誇る生産活動を継続していることは忘れられがちです。イギリス、日産のサンダランド工場では、新興国の低コスト車に対抗するための、大幅なコスト削減方法を実証しています。同エンジン工場では、NC ツインタレット旋盤 4 台にレニショープローブを導入。これにより 25 万ポンドの初期コスト削減達成しました。

日産のサンダランド工場は 1986 年に設立され、1991 年にはカムシャフト専用の 2 本の生産ラインの稼働が始まりました。新モデルの開発やエンジンのバリエーション拡張に絶えず取り組んでいる日産が、将来的な生産ニーズに対応するために、それまでとは異なるまったく新しいアプローチを導入したのは 2001 年のことでした。

担当エンジニア、Simon Edwards 氏は以下のように述べています。「当時の生産ラインでは、複雑な最新型カムシャフトの生産に対応できないのは明らかだったため、ラインの工程を設計し直し、2 本の専用ラインからフレキシブル生産ができる 1 本のラインに作り変えました。新ラインは、古い 2 本のラインの半分の床面積ですが、以前と同レベルの生産能力を保持しています。2002 年にはこの新ラインで、14 種のカムシャフトを生産していましたが現在は 6 種の生産に落ち着いています。」

Edwards 氏は、自身が日産に入社する前に勤務していた Michell Bearings 社でレニショーの主軸装着型プローブシステムをマシニングセンターで使用していた経験から、プローブの導入が日産での目標達成に最適な方法であると認識していました。「最低限の投資ですむよう、使用している工作機械で使えるものはできるだけ使って、最新型カムシャフトの生産をしなければなりませんでした。そこで選んだのは、使用年数 14 年と 8 年のオークマ製の旋盤各 2 台の計 4 台。それまでと同じ専用加工工程を用いるつもりでしたので、その 4 台の旋盤本体の品質を維持する必要と加工後に専用計測器で完成品のカムシャフトを寸法検査する必要がありました。様々な寸法に対応できるスタンドアロン型の計測装置 1 台にとった最初の見積り額が 40 万ドルだったため、旋盤の柔軟性を利用して色々な機種に使える旋盤装着型プローブに方向転換し、その結果、旋盤 4 台すべてに対しての投資額は 4 万ドルですみました。」

Edwards 氏によれば、加工機のオペレーターやエンジニア達は、加工作業中に計測作業をしたがらず、「加工機は金属加工のためのもので、計測のためのものじゃない!」と彼らからよく言われ、当初かなりの反対があったそうです。しかし、Edwards 氏は現場を変える必要性を強く感じてました。「すべては目標の生産力に到達できるサイクルタイムを実現するためであり、加工時間を削ってプローブ計測時間を組み込むためにあらゆる手をつくしました。ツインタレットを効率的に使うことでほぼ解決でき、最終的には、プローブ計測時間を含めたトータルのサイクルタイムのほうが、以前の機械加工だけのときより短くなりました。今は、当初のプローブを毛嫌いする雰囲気とは全く逆になっています。現場に行って、プローブとそのソフトを撤去しようか、と言ったりしたら、機械に近寄らせてもらえません。」(Edwards 氏)

では、プローブは日産の工場でどのようにしてこのような劇的な効果を挙げて、満足を得ているのでしょうか?特に顕著な成果が現れたと報告されているのは、パーツ芯出しと加工後の寸法計測で、プローブを導入したことで加わった新しい工程がスクラップ量の低減に大きく貢献しました。

カムシャフトの鋳物は、前面に基準面が作ってあり、旋盤の加工セルに持ち込まれ、ひとつひとつ手作業で旋盤に載せられます。およその位置合せの後、旋盤の芯押し台でワークを固定します。タレット装着型プローブを使用し、全ワークの前面の位置を数秒で割り出します。計測値と公称値が比較され、その過不足分、次に実行する機械加工プログラム用の 2 つのタレットオフセット値が直ちに更新されます。その後、この補正済みの原点をすべての位置決めの基準として、旋盤がカムシャフトの複数の面を切削していきます。ここまでのサイクルタイムはトータル 90 秒です。

Edwards 氏はここでかなり大胆なことを言い切りました。「プローブ導入の結果、私の知るかぎり、これらの旋盤でスクラップが出たことは一度もありません。年間 55 万個のカムシャフトを生産していて、です。事実今、大台のターゲットに手が届く所まできており、今年中に生産良品数 200 万個に到達する見込みです。基準の再確立というこの工程で旋盤から後の工程にも影響が及び、後の工程でのスクラップがゼロになりました。それら後の工程では、重要な形状に対して以前は非常に厳格な公差を使っていましたが、今は大きな公差を使っています。公差を大きくしたことで、後工程でのダウンタイムが最低限に抑えられ施設効率も上昇しました。」

レニショーのタレット装着型プローブは、加工後の抜き取り寸法検査にも使われています。大半の形状で求められる公差は通常 ±0.2mm とあまり厳しくはないものの、厳密にその公差内に収める必要はあり、制御できていないと誤差が大きくなっていきます。プローブによる 17 個の形状の計測には約 40 秒(長めのシャフトの場合は最大 60 秒)かかり、計測のたびにばらつきを基に工具オフセットを更新していきます。当初は、この寸法検査を、カムシャフト 10 個に 1 個の割合で行っていましたが、実際の工具摩耗の実績から、20 個に 1 個の割合ですんでいます。

Edwards 氏は、カムシャフト生産ラインの現場で多くの時間を過ごします。その理由を以下のように説明しています。「ここで挙げた成果はすべて、工程に直接関わっていて、問題が起きればそれに気付く生産現場のエンジニアのおかげなのです。これらの古い機械は、プローブを装着したことでインテリジェントな機械として生まれ変わっているため、何か問題が起こると対処できるようになっています。今後、プローブが装備されていない工作機械が新しく入ってくることはないでしょう。これまで、金額に見合った価値を発揮しており、カムシャフトの生産ラインに投入した投資の中でベストな設備なのは明らかです。」(Edwards 氏)

システム全体のキャリブレーションが、NC 旋盤上で、マスターパーツを使って自動サイクルを使うことでほんの数分で完了します。この工程が基準であり、これによりトレーサブルな品質が保証されています。各 NC 旋盤には生産工程で使用する計測システムの使用方法を解説した作業ガイドが貼り付けてあり、作業員がいつでも確認できるようになっています。その作業ガイドには、レニショープローブでの加工後計測を行うべき 4 つの主な理由や場面が記載されています。

  1. 総合的な品質の維持のため。つまり、規定の割合(20 個ごと)での主要形状の計測。
  2. 工具交換時。サイクルの都度、旋盤の工具管理システムが参照され、全工具交換か単一工具交換かが判断されます。全工具交換の場合はすべての形状が計測され、単一工具交換ではその工具が加工した関連形状のみが計測されます。
  3. 機種変更時。
  4. シフト開始時の計測、または初加工品時。旋盤のパーツカウンタはサイクル実行のたびにモニターされます。日曜夜の機械停止状態から運転を再開するときに特に重要です。

生産能力が劇的に向上し、またプローブ計測が標準的な手法にまでなった今では、日産の工場で当初見られていた抵抗は遠い昔の話のようです。

広大な面積を誇るサンダランド工場の敷地には、内製部品や工場周辺に多数並ぶ部品メーカー製部品を含む、日産車向けの全部品の生産と組立に必要な製造工程のほぼすべてが集結しています。そこに訪れてみると、高い水準の清潔さとオペレーターやエンジニアの前向きで熱心な姿勢に魅せられることでしょう。他のメーカーが見習うべき何かがあるのかもしれません。