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ケーススタディ: 初生羽毛の力学的特性 - University of Southampton の博士論文

2021 年 9 月 1 日

Christian Laurent 氏は、2020 年に University of Southampton (英国) で生体材料工学の博士号を取得しました。「初生羽毛の力学的特性」と題するその論文は、放射線コンピュータ断層撮影、機械的試験、およびラマン分光分析を併用して、羽毛の力学的挙動についての理解を深めました。University of Southampton は、レニショーの inVia コンフォーカルラマンマイクロスコープを所有しており、Laurent 氏のような学生による材料組成の研究を支援して多くの賛辞を得ています。

Laurent 氏は、羽毛の軸にある皮質層の向きと厚みを調べ、鳥の飛行を可能にする羽毛の力学的性質との関係を考察しました。風切り羽に含まれるタンパク質の二次構造を高精度で分析できることから、ラマン分光が使用されました。4 種の鳥類 (カモメ、チョウゲンボウ、マガモ、ハクチョウ) の羽毛について、特にアミド I バンドの振動数に着目して分析を行いました。分析に際し、正確性と信頼性に優れ、多様なサンプルを傷めずに扱えることから、レニショーのラマン inVia コンフォーカルラマンマイクロスコープが選ばれました。

Laurent 博士は、次のようにコメントしました。「inVia は S/N 比が高いため、1 回の試行で良質なデータを取得できました。また、必要な波長のレーザーがすでにシステムに備わっていましたので、時間の節約になり、速やかに研究に没頭できました...ラマン分光を使用したのは初めてでしたが、レニショーのソフトウェアは使いやすく、1 回のトレーニングで十分に習熟できました」

羽軸の内外の皮質層にあるタンパク質を比較するために、博士はアミド I バンドに 6 本のカーブをあてはめ、1668cm-1 におけるβシートのタンパク質ピークと 1613cm-1 におけるポリペプチド側鎖ピークとの比率を比較しました。その結果、調査した 4 種すべての鳥類について、βシート構造を持つタンパク質の濃度が、外層に比べて内層で高いことが明らかになりました。この発見は、Laurent 博士の追加研究を裏付けるものであり、曲げ剛性の指標であるヤング率値 E が外層よりも内層で高いということが、初めて明らかになりました。ここから、内層は曲げに強く、外層はねじりに強いという示唆が得られました。

鳥の羽のラマンスペクトル

上のグラフは、アミド I 領域のデータのあてはめ例を示しています。青色の線は記録されたデータであり、灰色で示した 6 成分のガウス関数からの近似カーブが黒色で示されています。このスペクトルは、コブハクチョウ (C. olor) の初列風切り羽 (P1) の背部の外層のもので、羽柄の根本から 40% の長さで採取したものです。近似カーブの R2 値は 0.9898 です。

まとめ

レニショーの inVia システムを使用した詳細なラマン分析により、Laurent 博士は、羽軸の層が異なるとタンパク質の構造が異なり、この違いがもたらす力学的適応が鳥類の飛行の進化に関与している可能性があることを発見しました。

Laurent 博士は最後に次のように付け加えました。「inVia はマイクロスコープとインターフェースできたため、ラマン分光を独自の課題に応用できました。inVia がなければ、このような学際的なコラボレーションはできなかったでしょう。今回の成果は、今後の研究に希望を灯しました」

Laurent 博士の研究ならびに個人的・専門的抱負について詳しくは、Laurent 博士の Web サイト www.christianlaurent.me をご覧ください。

Laurent 博士の論文は、ScienceDirect の Web サイト: Journal of Structural Biology.211.1.107529 に掲載されています。

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